農協の課長に転生した儂がドロップ☆3の低火力スキルだったけど自己回復部分のおかげで半分鬼の美少女と能登無双な件 3



信長の野望20XXの二次創作です。
「思ってた○○像と違う」あったらごめんなさい。
読みたい人だけどうぞ。





~~~能登進軍中~~~


「へくしょん、ぶるっ」

ぱしゃぱしゃと、水の撥ねる音。

「...よいか!再度勝手なマネをすれば...今度こそ『ぐんぽうかいぎ』もの!じゃぞ!」

夕暮れ時の、山里の小川。
豪姫は清らかな水を桶で掬い取ると、やや乱暴に、赤やら緑やらの液体の付着した橋姫の身体をあらう。

妙玖「まあまあ...後で私とゆるりとお話しましょう、橋どの」

妙玖が布地でもって、清めたあとの橋姫の身体をくるむ。
つい先程まで、惨憺たる光景を現出させていた橋姫も、こうなっては母親と赤子の如しである。

小野寺はというと、女性陣に加わるわけにはいかず、少し離れたところで背を向け木の根に腰を下ろしている。

機構支給の缶コーヒーを手元に置きながら。






あの時、橋姫のもとに小野寺が駆けつけると、彼女は既に脚からどくどくと血を流していた。
毒で死にきらなかった甲冑虫に刺されたのだろう。

「デラさん...ごめん」

鬼の戦いにも限度があるのだろうか。彼女の場合、嬲るような無道の振る舞いが、押し寄せる敵の群れから見ると隙であり綻びでもあったのだ。

橋姫はふっとその場に倒れ込む。
甲冑虫のもたらす麻痺...軽い脳震盪を起こしたようになるそれである。

小野寺が周囲を見ると、先ほど橋姫があれほどの損害を与えたにも関わらず、なおも幽魔はこちらを包囲しにかかっている。

ちらと豪姫のほうを確認すると、小野寺はパニッシャーX25を肩に担いだ。








「眠れないのかね」

「...はい」

「傷は大丈夫か」

「鬼ゆえ、自分で治せまする」


夜が更けた。
野営地は、彼らの後を追ってくる機構のスタッフが用意した、男女別に用意されたキャンピングカーのような車両である。

小野寺が幌の部分に腰掛けていると、こっそりと車両を抜けてきた橋姫が話しかけてきたのだった。

「あの後、たっぷり妙玖さまに諭されました」

「どのように」

「己に力があっても、あのように惨い戦い方をしてはなりませぬ、それは巡りめぐって己の心を蝕み、苦しめることになりまする、と...」

(さすが毛利の奥方様よ。儂が言わんとしたことを大抵言っておる...)

「私は」

「夫に捨てられた身」

「ただただ妬みに身を焦がしていた、そんな私を、外の国の人々は認めてくれた、それに報いたいと...」

言葉に間を置きながら、橋姫は己のことを語りはじめる。

「今日の振る舞いも、鬼である私の力をお見せすれば、皆が私を頼むようになる、そう思って...」


「...儂は、勝てればそれでよいとも思うがね」

「ただ、お主を見ていると、儂の息子たちを思い出す。なんというか危ういのよ...ひとつふたつ申しておく」

小野寺輝道の長子・光道は、仙北一揆に連座して自害したと伝わる。仁愛の情溢れる将であったからこそ、上方へ絶望的な抵抗を試み、民に殉じたのであろうか。

「お主には儂にない才があり、価値がある。己を大事にせよ。」

次男・義道は勇猛さでは奥羽にまたとない存在であったが、最上義光はじめとする周囲の勢力に翻弄され、没落していった。

「また、己の力の使い方を間違えてはならぬ。それがわからぬ時は儂を頼るのだ」


ーーーここまで語り、小野寺輝道ははっとした。
今のは、仮に出来うることならば...己の息子たちにこそ語っておきたかった事だと。


そして橋姫はというと、はらはらと涙を流している。鬼ではなく少女の涙であった。


「明日も早かろう。寝るのだぞ」

小野寺はばつが悪そうにキャンピングカーの中へと引っ込んでゆくのだった。


~~~能登進軍中~~~

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